松本重夫氏の本を紹介しておもいだしたことがある。チャールズ・ビアードに関連する。占領下、アメリカ研究は重要であり、世の注目をあつめていた。斎藤先生も高木八尺らの先輩諸氏と研究にいそしんでいた。その研究雑誌が突然休刊したことがある。チャールズ・ビアード特集号である。印刷過程で全ての原稿が盗まれてしまった。予告した号は当然休刊。実は占領軍にとってこの号は頭痛の種。頭痛どころか占領目的を全壊させかねない爆弾だったのだ。
ビアード博士はアメリカ歴史学会の会長を何期か務めた碩学。ところが正義感のいちじるしく強い方だった。日本の不正義にもアメリカのそれも容赦しない。前田多門らの原稿は、ビアードの最期の書「ルーズベルト大統領と1941年戦争の到来」の紹介をしていた訳だ。これはたまらない。しかし発禁はいかにもはずかしい。で、鶏鳴狗盗の出番だ。松本氏が経緯を知っていらっしゃるか微妙だが50%の確率だろう。故斎藤教授はICUの教授もなされ教え子にも慕われたようだが、君子人だけにこんな裏面史はとても信じられないと思う。雑誌「アメリカ研究」は直後GHQから書店販売禁止の処分をうけた。2005年陛下に文化勲章を親授された斎藤教授は2008年1月永眠された。
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